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あたしは、透矢と明神さんの間にあったすべてのことを知ってるわけじゃない。透矢が何をそんなに悔しがっているのか、何にそんなに怒っているのか、正確にはわからない。 だけど、このままじゃダメだということはわかる。 このままだと、透矢と明神さんは、二度と元通りには戻れない。あたしが友達とするような喧嘩とはレベルが違う。透矢も明神さんも、どっちも真面目で、頑固で、どうしても譲れないものがあって──生き方が定まっていて。だから、それが食い違ってしまった相手のことは、きっと一生認められない。 あんなに、通じ合っていた二人だったのに。 あたしが、入り込む隙なんかないくらい── ──でも、このままにしておけば? 心臓が鳴った。 —————————————————————————————————— 初めて明神さんが名前を呼んでくれたときの、声が。 忘れるはずがなかった。 明神さんのことはいけ好かない。根本的に性格が合わない。そう思っていたのに、あの瞬間、仲良くなれる気がしてしまった。 あたしがスマホの使い方を教えると、明神さんは少し嬉しそうにLINEの画面を眺めていた。 あたしが先に透矢の質問に答えると、明神さんは悔しそうに唇を尖らせた。 彼女は高嶺の花でもなければ孤高の美少女でもない。ただの女の子だ。少し生きづらい性格に生まれてしまっただけの女の子だ。 何の謂れもない。 誰にも理解されないまま生きていかなきゃいけない理由なんて、きっと、どこにもありはしないんだ。 …………ああ…………。 知らなかった。 ——————————————————————————————————— わかってなかった。 あたしが……こんなに、損な性格をしてるなんて。 そう。確かにあたしは、透矢のことが好きだよ。自分でもびっくりするくらい好きだよ。いつでも一緒にいたいし、抱き締めてほしいし、キスしてほしいし、身体に触れてほしい。透矢でエロい妄想をしない日なんて、もう一日もないよ。 ──だけど、それってそんなに重要? 初めて名前を呼ばれた瞬間とか、嬉しそうに微笑む顔とか、ああいうのを全部捨てて、台無しにしてもいいくらい、重要なこと? そう思ったら、もうダメだ。 もう、ズルいことをしようなんて、考えられなくなっちゃった。 三ヶ月前、机のひどい落書きを自分で消しているとき、みじめな気持ちでいっぱいだった。 自分の小ささが、卑怯さが、嫌で嫌で仕方がなかった。 泣く権利なんてなかった。明神さんのほうがみじめな思いをしたんだから、あたしが涙を流すことなんてできるわけもなかった。 何度も思った。 もし、あたしに。 周りの空気を読まず、場の流れにおもねらず、あたしの前に飛び出してきた──透矢みたいな、勇気があったら。 あんな気持ちはもう嫌だ。 あんな自分はもう嫌だ。 だから── ──ああ、そうだよ。そうだった。 それが、あたしにとって一番重要な、あたしの真実だったん
紅ヶ峰は赤らんだ顔のまま、花咲くように微笑んだ。 「好きな人には、カッコよくいてほしいでしょ?」 「……、え?」
「僕も、お前みたいにはならない」 据わった目を正面から見返して、僕は切り返す。 「なれないし、なりたくもない。何度でも邪魔をする。何度でも否定する。きっと一生涯、お前のやることを認めないし、理解しない」 「……いいね」 あはっと、和花暮は小さく笑った。 「わたしたち、両想いだ」 そうして、僕と和花暮諏由は別れた。
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